「さびしい人のいない」保育園づくりと生活保育の探究―学校との関係を問い続けたある保育園の実践史に学ぶ―

  • 販売価格 1,650円(本体1,500円、税150円)

    「さびしい人のいない」保育園づくりと生活保育の探究―学校との関係を問い続けたある保育園の実践史に学ぶ―
    渡邉保博 著
    A5判 109頁 並製
    ISBN978-4-7880-2182-2 C0037

    2023/2/3 発行

    保育の「学校化」をめぐる問題を検討し、保育園での障害児保育の実践から、保育の「閾値」と親・家族の生活にとっての保育園の意味を問う。

    目次
    1. はじめに−近年の保育政策の動向と保育の「学校」化への懸念

    2.近年のOECD加盟国の保育(課程)改革と保育の「学校化」
    1)「学校化」をめぐる2つの問題
    ①「保育方法」からみた「学校化」
    ②保育の「学校化」問題のもう1つのポイント−「福祉」領域からの「分離」
    2)わが国における保育の「学校化」問題の検討
    ①「保育方法」に焦点化した検討とその問題
    ②学校と保育所の制度・実践原理の異同に注目した実践研究

    3. 清水住子とつくし保育園の実践的探求に学ぶために
    1)先行研究について
    2)なぜ,つくし保育園の実践とその記録に注目するか
    ①保育園と学校の違いを「はっきり」意識しはじめた時期の実践
    ②いづみ保育園の初期の保育への影響から−保育園は「教育」の場や「教室」空間ではない
    ③つくし保育園という個別の園の実践とその記録に注目するのはなぜか
    ・保育園保育のあり方は、各園の実践的な模索を通してつくられていく
    ・実践の「個別性をそれ自体として尊重する」ため
    ④つくし保育園時代といづみ保育園時代の初期の史資料と利用等に関する倫理的配慮

    4.つくし保育園における障害児保育のあゆみ−制度化を求めて
    1)つくし保育園の立ち上げと障害児保育
    2)制度化以前において障害乳幼児がおかれた全国的な状況
    ①「放置」され締め出される障害乳幼児と家族
    ②受け入れた障害児の「中途退園」「切りすて」
    ・園側の対応
    ・親も不安をかかえる
    ③障害児の入園拒否や「中途退園」の問題の核心は何か
    3)大津市における障害児保育の制度化の概略
    ①制度化を支えた重層的で広範なとりくみ
    ②要求運動を支えた保育実践
    ③制度化の意義
    ・希望する障害児の「全員入園」
    ・「ノーマリゼーション」と「インテグレーション」の思想と実践
    ・「保健」「医療」「保育」の3側面を結合して
    ・条件整備が進む
    ④保育者たちの不安や動揺と「実践者の立場性」
    ・障害児保育の実施に直面した保育者たちの不安や動揺
    ・問われた「実践者の立場性」

    5.つくし保育園における障害児保育と入園問題
    1)開園時から障害児保育に挑戦
    ①園の保育の「3つの基本線」と障害児の受け入れ
    ②入園問題をめぐる話し合いをめぐって−Aちゃんの場合を中心に
    ・初めの入園申込みと話し合い
    ・再度の入園問題と話し合い
    ・「ようす」をみる観察期間と受け入れ態勢の決定のための話し合い
    2)入園問題の議論とその意味−職場討議の力1
    ①「考え、話し合う」ことをくりかえすことと「民主的運営」
    ②大変な状況のもとで「建前と本音の分裂した職場」にしないために
    3)日々の実践を全園の協働で―職場討議の力2
    ①園全体の「一致点」で実践する
    ②実践への意欲が生まれる
    ③障害児保育の進展と新たな「日常」の創出

    6. つくし保育園における障害児保育実践の展開
    1) 実践の課題−障害児がクラスの「一員」となる集団づくり
    2)一緒に育ち合う保育の模索が始まる 
    ①Aちゃんの場合
    ②Dちゃんの場合
    ③育ち合う子どもたち
    3)障害児保育が明るみに出した「今までの保育観」
    ①保育者がもっていた無自覚な保育観
    ②問われた「保育観」と2つの問題
    4)「キチンと全員が揃う」ことが「じょうずな保育」なのか
    ①園が目標としてきた子ども像からみて
    ②「学校」的子ども像への疑問
    ③障害児を「厄介者」にする保育を変える視点〜「さびしい人のいないクラス」づくり
    ④「さびしい人のいないクラス」づくりと「学校」的な目標・内容への問い
    5)「一斉保育にのみに賭け」て障害児を「はみ出し者」にする保育を超えるには
    ①実践の事実から
    ②「障害をもつ子も仲間として楽しく生活する保育」へ
    ③「生活を基礎」に置いた保育園保育と学校教育との違い
    6)「生活を基礎」に置いた保育と長時間保育との関連
    ①「あらゆる時間帯の生活のなかに保育の意味をとらえる」保育を
    ②「日常生活」をベースにした「自然」な教育への期待と「学校」的保育からの決別
    ・長時間の園生活の問題とおとなとの生活・活動への参加
    ・「何かを教え込む」という「学校」的保育から「生活を重視」する保育へ
    7.保育の「閾値」と親・家族の生活にとっての保育園の意味
    1)障害児とその親・家族の生活状況の理解と援助
    ①家族ががんばるほど「あたりまえの生活から遠ざかっていく」状況
    ②生活を再組織していく親・家族
    2)長時間保育児の朝食・おやつの改善と家族の生活支援
    3)子育て期の家族にとって「社会的空間的レジリエンスを生み出す場」としての保育園

    8.おわりに



    引用文献